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大阪高等裁判所 昭和62年(ネ)1822号 判決 1988年4月05日

控訴人 フアーストマリン株式会社

右代表者代表取締役 堀野清二郎

右訴訟代理人弁護士 志水巌

被控訴人 株式会社大和銀行

右代表者代表取締役 安部川澄夫

右訴訟代理人弁護士 眞鍋能久

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

一  当裁判所も、被控訴人の控訴人に対する本訴請求を認容すべきものと判断する。その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決理由説示の被控訴人と控訴人関係部分(原判決七枚目裏一〇行目から同一四枚目表三行目まで及び同一五枚目表末行から同一六枚目裏八行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決七枚目裏一二行目の「一ないし三」の次に「、原審証人寺田寧充の証言により成立を認めうる甲第二二ないし第二四号証」を、同八枚目表一〇行目の「被告フアーストマリンは」の次に「被控訴人主張の日に」を各加える。

2  同裏三行目の「第一七」の前に「第一一、第一二号証、」を、同行目の「各証言」の次に「及び弁論の全趣旨」を各加える。

3  同七行目の「発行されていること」の次に「及び船荷証券が発行されている場合は運送品の引渡は船荷証券と引換に行われるべきこと」を加える。

4  同九枚目表四行目の「荷受人」から「銀行の」までを「荷受人の取引銀行が別に保証した」と訂正し、六行目の「引渡を受けた者」の次に「(荷受人)」を、同行目の「船荷」の前に「右保証状により、」を各加え、一一行目の「銀行を入れて銀行の」を「荷受人自身のほか取引銀行も」と訂正する。

5  同末行の「被告フアーストマリン」の前に以下のとおり加える。

「中華民国と日本(神戸港)とでは、海上輸送距離が短く、運送品を積載した船は三日程で中華民国から到着するが、船荷証券は発行されてから荷受人を通じて呈示されるのに七日ないし一〇日かかつていたため、運送品の引取りを急ぐ荷受人は、運送業者に対し、船荷証券と引換なしで保証渡による運送品の引取りを要求していた。控訴人は、荷受人の要求によりバンクL/Gを徴して保証渡をしていたが、荷受人が銀行の保証なしでの運送品引取りを要求してきたことから、万海航運と控訴人との間でその取扱いの協議がなされ、」以上のとおり加える。

6  同裏一二行目の「引渡すに当り」の次に「、右の協議結果に基づき」を加える。

7  同一〇枚目表六行目の「クロスは」の次に「、主として中華民国から運動靴を輸入し、これを国内で販売していた会社であるが、」を、同行目の「原告」の前に「昭和五七年一二月」を各加え、八行目の「はかつたものであり」の次に以下のとおり加える。

「、被控訴人は、クロスが商品を引き取つても、信用状開設に伴い被控訴人が支払を承諾したことの見返りとして有する求償債権(支払承諾見返金)の支払を直ちにクロスに求めることはせず、これをクロスに貸付けたことにして、クロスから貸付金相当額の約束手形を受領した段階でクロスに船荷証券を裏書交付していたが、その後クロスに信用上問題があつたので、昭和五九年七月以降の輸入信用状開設については、右の取扱いを改め、一覧払決済条件(クロスから支払承諾見返金を現金で受領したときに船荷証券を裏書交付する)に切り換えた(なお、いずれの場合も、運送品の所有権は決済がされるまで被控訴人に留保していた。)。クロスの輸入商品には」

8  同末行と同裏二行目の「輸入ユーザンスの」をいずれも削除し、五行目の「輸入ユーザンス」を「支払承諾見返金」と、九行目の「始まり」を「始まつたが、らちがあかず」と各訂正する。

9  同一一枚目裏七行目の「従つて」の次に「、右の物品の引渡は船荷証券と引換になされるべきものであり、」を加える。

10  同一二枚目裏二行目の「取扱うものであるから、」を以下のとおり訂正する。

「取扱うものであるし、前記のとおり、船荷証券と引換えることなしに証券の表彰する物品の引渡をすることは証券の所持人に対する関係では違法となるというべきであるから、控訴人としても、代理店といえども、」

11  同四行目の「負うものであり、」を以下のとおり訂正する。

「負うものである。そして、控訴人は、船舶代理店業を営む専門業者であつて、船荷証券が発行されているときは運送品の引渡は船荷証券と引換になされるべきこと及び本件船荷証券が発行されこれを所持する者が他にいることを知つていたのであるから、かかる立場にある控訴人が本件船荷証券と引換えることなく本件商品をクロスに引渡した以上、控訴人に過失があることは明らかであり、控訴人が本件商品をクロスに引渡したことは、証券所持人である被控訴人に対する不法行為になるというべきである。」

12  同一二枚目裏七行目から同一四枚目表三行目までを次のとおり訂正する。

「四 控訴人の抗弁1、2について

1  控訴人は、被控訴人がクロスが本件商品を引き取ることを事前または事後に承認し、もしくはクロスが本件商品を他に転売するのを黙認したから、被控訴人の本件船荷証券に基づく引渡請求権は消滅したと抗弁する。

被控訴人が、本件船荷証券を取得した時点で、その直前または直後に本件商品が神戸港に到着するであろうことを知つていたこと、被控訴人は、銀行として、自ら本件商品を引取ることを予定していなかつたこと、控訴人が、本件商品到着の事実を船荷証券の通知先当事者たるクロスに通知したことはいずれも当事者間に争いがなく、また弁論の全趣旨によれば、運送人又はその代理店による海上運送物品の荷受人に対する保証渡は商慣行といえ、被控訴人においても控訴人がクロスに対し本件商品を保証渡の方法により引渡したことを知つていたことが認められる。

しかし、船荷証券の所持人は、運送人に対し、証券の記載に従つた運送品の引渡を請求できるのであり(証券の債権的効力)、船荷証券にかかる効力がある以上、被控訴人は、自ら本件商品の引取りを予定していたか否かにかかわらず、本件船荷証券を所持する限り本件商品の引渡請求権を有するものである。したがつて、クロスが本件船荷証券と引換でなく、保証渡の方法により本件商品の引渡を受けても、被控訴人においてクロスから決済を受けて本件船荷証券を交付するまでは、本件船荷証券の所持人である被控訴人が本件商品の引渡請求権を失うことにはならないのであり、被控訴人が保証渡の事実を知つていたからといつて、本件船荷証券と引換えることなくクロスに対する本件商品の引渡を承認したとはいえない。

他に被控訴人がクロスが本件商品を引き取ることを事前または事後に承認したことを認めるに足りる証拠はない。

また、被控訴人がクロスが本件商品を転売することを黙認していたことを認めるに足りる証拠もない(被控訴人としては、本件船荷証券を所持している限り、これに基づく本件商品の引渡請求が可能なのであるから、本件商品到着後被控訴人が控訴人に本件船荷証券を呈示するまで期間があるとはいつても、それによつて被控訴人がクロスが本件商品を転売することを黙認していたとはいえないし、前記のとおり、被控訴人はクロスから決済を受けるのと引換に本件船荷証券を交付することになるのであるから、クロスから決済を受けていない被控訴人が本件船荷証券と引換でなくクロスが本件商品を転売することを黙認していたとは到底いえない。)。

2  次に控訴人は、控訴人に対し本件商品の引渡を請求するのは信義誠実の原則に反するか、損害を軽減する義務に違反すると抗弁する。

しかしながら、前記のとおり、船荷証券の発行されている運送品のいわゆる保証渡は、後日荷受人から運送人に対し船荷証券を入手次第返還することが予定されたものであるところ、本件において、クロスからの控訴人に対する本件船荷証券の返還が実行されていないのであるから、控訴人は本件船荷証券の所持人から証券を呈示して本件商品の引渡を請求される可能性があることは当然予期しなければならないことであるし、他方、船荷証券の所持人は当然に証券の記載に従つた運送品の引渡を請求できるのである。従つて、本件船荷証券の所持人である被控訴人が本件船荷証券による本件商品の引渡を請求することは当然の権利行使であるから、これが本件商品の保証渡しの時期から日時を経過しているからといつて、また被控訴人がクロスに対して他に担保を有するからといつて、何ら信義則に反するとはいえないし、損害軽減義務に違反するとすることもできない。」

以上のとおり訂正する。

13 同一五枚目裏四行目の「滅失した」の次に「場合に準じ、右引渡不能となつた時点における損害を賠償する義務がある」を加え、五行目の「滅失」を「引渡不能」と訂正する。

14 同一六枚目表一一行目の「反証はない」の次に以下のとおり加える。

「(控訴人は外国通貨の日本円への換算は最終口頭弁論期日における為替相場によるべきであると主張するが、被控訴人の損害額は、控訴人の不法行為時において本件船荷証券が表彰する本件商品の交換価格であるから、その価格が外国通貨で表示されているときは、その時点で日本円に換算した額がその商品の交換価格となる筋合である。被控訴人の損害賠償債権は、外国の通貨自体の給付を目的とする債権ではないから、最終口頭弁論期日の為替相場によつて換算すべきものではない。)」

15 同末行の「滅失」を「引渡不能」と、同裏二行目の「被告らの抗弁3について。」を「控訴人の抗弁3について」と各訂正し、同三行目の「被告ら」から八行目の「理由がない。」までを以下のとおり訂正する。

「控訴人は、被控訴人が損害を蒙つたことについては、被控訴人にも過失があるから、過失相殺をすべきであると抗弁するが、本件全証拠によつても、被控訴人に過失があるとは認められない。右抗弁も理由がない。」

二  よつて、原判決は相当であるから、民訴法三八四条により本件控訴を棄却する

(裁判長裁判官 栗山忍 裁判官 田坂友男 山口幸雄)

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